沖縄県在住、青ミカンさん(30代女性)の英語にまつわる体験談です!
人員不足で募集も・・・ 面接にやってきたのは!
私は現在、育児休業を取得しているが、本職は飲食業で調理をしている。
もう数年前のことになるが、神奈川県の湘南・江の島の海鮮料理屋で板前として勤務していた経験がある。
今からお話するのは、その時の出来事である。
当時は、2020年東京オリンピックのセーリング競技で江の島が会場に決まったり、小室圭さんと眞子さまのご婚約が発表され、小室さんが過去に「湘南海の王子」だったことから江の島が注目を集め、観光客が続々と増えていた。
私が勤めていた店も爆発的に増えた観光客のおかげで、連日のように満員御礼、入店まで1時間待ちの行列ができていた。
当然だがそれまでのオペレーションでは業務が円滑に進まず、従業員は毎日人手不足を感じていた。
店の社長もようやく重い腰を上げて、新たに人員募集を始めてくれた。
募集を始めてすぐに応募があり、社長と料理長による面接が組まれることになった。
面接当日にやってきたのは、真っ白なキャップを被り、日に焼けた黒い肌、タトゥーの入った丸太のような腕、ロン毛を風になびかせた大柄な外国人男性と小柄な日本人女性だった。
彼が面接を受ける張本人だと知った時、その場にいた従業員は全員度肝を抜かれたに違いない。
正直、誰もが反応に困っていた。
人手は、それこそ猫の手も借りたい程に必要である。
しかし外国人を雇って一緒に働けるのだろうか、とみんなが思ったのだ。
採用を決めるのはもちろん雇い主である社長だ。
従業員なら誰もが知っているが、この男は変わり者だ。
なんなら出入りの業者までもがご存知の、一癖ある人物なのである。
さらに言うと社長は「来る者拒まず」で、以前も面接にやって来た人は全員採用していた。
さすがに今回は断るだろうと思っていた。
例の外国人男性は、小柄な日本人妻を連れて、通訳してもらいながら面接を受けていたのだ。
通訳が必要な人間とこんなに忙しい職場で一緒に働いても、一体どうやって仕事を教えれば良いのか?
社長はそれでも採用した。
何故だ?と心の中で社長を責めても、彼の考えている事は分からないし、そう決めてしまったのだから雇われの身はそれに従うしかない。
そうなると、問題はこのニューカマーにどのポジションで働いてもらうかだ。
ホールの配膳という案も一応あったが、でかくて黒い中年外国人男性が料理を運んでいたらお客様が驚いてしまう。
そのため客席からは中が見えない厨房で、洗い場を担当してもらう事になった。
この厨房の新しい仲間は、名前をJeffと言った。
ハワイ出身で、サーフィンが大好きな40台後半のいい年したオジサンだ。
日本人のトモコさんと結婚し、湘南地区に住むことになったらしい。
日本語はカタコトで日常会話レベルをなんとなく話せるらしい。
テスト勉強はできても… 言葉の壁を感じる日々
いよいよJeffが初めて出勤してくる日がやってきた。
私は料理長から直々に「仕事を教えるように」と頼まれていた。
なぜ私が頼まれたかと言うと、私は仕事で料理の世界に飛び込む前に、大学で英文科を専攻していた事を、料理長が知っていたからである。
大学は中退してしまったが英語には少しは自信があった。
幼少期は、大手の子供向け英語スクールに通い、中学・高校に進学してからも英語だけは成績をなんとか維持していた。
大学でも学内実力テストで上位の成績で、TOEICもそこそこのスコアを出せた。
教科書の和訳が得意だったし、課題で英論文を書いても教授からの直しがなくGoodを貰った。
洋楽を聴き、洋画を鑑賞し、とにかく英語が好きでなるべく触れる機会を作っていた。
Jeffの出勤時間が迫っていた。彼は少し早めにやって来た。
「ハジメマシテー。Jeffッテヨンデクダサイー!」
と明るく日本語で挨拶してくれた。
なんて陽気で朗らかなハワイ人だろうと、こちらまで明るい気持ちになった。
みんながひと通り自己紹介をして、いよいよ仕事開始だ。
Jeffに洗い場での皿洗いの方法や食器洗浄機の使い方を教えなければならない。
「Jeff。ここのラックにお皿が下がってくるから、食べ残しをこのゴミ箱に入れて、お皿はこっちのシンクに入れて。シンクには水を溜めておいてね。」
と日本語で説明した。
しかしJeffはキョトンとした顔をして黙っている。
通じなかったようだ。
伝わるようにゆっくり話したり、違う単語を使ってみるがダメだった。
このくらいの日本語が分からないならずっと英語で説明するしかないのか…とガッカリしてしまった。
先ほどの明るい気持ちが嘘のようだ。
ただでさえ忙しくて、新人さんに教える時間も惜しいほどなのに、さらに英語で言わなければいけないなんて、と一瞬考えてしまった。
だが時間もお客様もいつまでも待ってはくれない。
やるしかないのだ。
だが…出てこない…。
英単語が何も口から出てこないのだ。
言いたいことがあるのに何も言えなかったのだ。
何て言ったら良いのかが全く分からなかった。
思考がもう停止してしまった。
私が勉強してきた事は何だったのか?
私は英単語・英文法を覚えるインプットをしっかりとやってきた。
きちんと文法に沿ったり、分からない単語を調べながら英論文を書くアウトプットもしてきた。
それでも「会話」が何もできなかったのだ。
仕方がないので、その場では英単語をいくつかボソボソと言いながら身振り手振りで説明して、Jeffに洗い物を始めてもらった。
万事がこの調子で、数週間はずっとこんな風に仕事を教えていた。
私はショックでたまらなかった。
言葉の壁を感じていた。
ネイティブの英会話がやる気スイッチを押した!
しばらくはコミュニケーションの取り方に悩んでいたが、毎日顔を合わせていると少しずつお互いに打ち解けてなんとかJeffと仲良くなり始めていた。
話題は忘れてしまったがLINEでやり取りをする機会があった。
Jeffは英語でメッセージを送ってくれていた。
確か自動翻訳のような仕様のLINEであったと思う。
Jeffのくれたメッセージは原文の英語も書かれた上でさらに日本語に直されていた。
LINEにそんな機能があることにまず驚いたが、それよりも興味が出たのはネイティブの使う言い回しやスラングだった。
日本で暮らすうちは滅多に触れられないネイティブのそれらは、何も難しい単語や文法が使われていなかった。
一見すると、こんなのあんまり勉強しなくても日本の中学生の英語レベルだろう、という感じだった。
しかし、そのレベルですらスラスラともカタコトとも出てこない自分自身に愕然としてしまった。
そんなモヤモヤを抱えていると、ある日「ワンフレーズ英会話」なるものを知った。
それはネイティブのよく使うフレーズを覚えるだけで英会話ができるようになる、という物だった。ネイティブのよく使うフレーズはパターン化しており、形として覚えて、あとは単語を入れ替えれば応用が利くし会話として通じるのである。
私はこれだ!と思い立ち、すぐに調べてスマホの無料アプリを入れた。
このアプリは様々なシチュエーションで使われる英会話の受け答えを教えてくれて、ネイティブスピーカーの発音も聞くことができた。
スマホアプリを入れた日から、私は仕事が終わってから自宅でビール片手に勉強を始めた。
まずシチュエーションを選び発音を聞いて、あとは自分でひたすらマネをしながら話すのである。
同居の家族に話す練習を聞かれるのは恥ずかしかったが、ビールで羞恥心を流し込み、時には飼い猫を相手にしながら、来る日も来る日も続けていた。
コミュニケーション能力開花!!
私の夜な夜なの練習がだんだんと見に付き始め、Jeffとも何となく会話が続くようになってきた。
ある日、ホールのバイトに香港からやってきた留学生がいたが、彼が帰国するため送別会が開かれることになった。
香港の留学生とJeffと同じテーブルについた私は、最初は会話もそこそこに、お酒と料理を楽しんでいたが、お酒が回って楽しくなってきた頃には3人で英語でベラベラと笑い話をするようになっていた。
また、休暇をもらって海外旅行をした時にも、積極的に現地の人に話しかけるようになっていた。
英語でお店に予約を入れたり、現地で見慣れない物を見つけた時に一体何なのか尋ねたりしていたのだ。
勉強を始める以前だったら、通じるかどうかも分からずに恐る恐る喋っていたのだが、一度身に付くと自信も出てきてどんどん話したくなっていた。
とにかく話して体と頭で覚える
この体験を通して思うに、私が英会話の勉強法を誰かにアドバイスするなら「ひたすら話してパターンを口と頭で覚えなさい」という事だ。
教科書に載っている英文法を覚えたらテスト問題を解くことができて、受験にも役立つのは確かだ。
そもそも覚えていないとセンター試験なども高得点をマークするのは難しく、希望の進学先に行けなかったりして、自分自身にすごく影響が出ると思う。
それはそれで大切なことだから、学生たちには教科書通りの勉強をぜひ頑張ってもらいたい。
そういう事は関係なく、「人と人がコミュニケーションを取るため」という目的になった時に、どうしたら自分の能力を鍛え蓄えることができるかが重要であると思う。
会話とは生き物であり、無機質に本やディスプレイを眺めているだけでは決して身につかない。
もし本気で英会話でコミュニケーションを取れるようになりたいと思うなら、ネイティブ講師の英会話教室でも、オンラインでテレビ電話でも、留学でも何でも方法はいいと思う。
とにかく話して口を動かして、たまにはネイティブ相手に話しかけてトライ&エラーを何度も経験して、話の練習次第で日常会話レベルはクリアすることができるのである。
そして、この練習と実践を積むやり方は色々な事に通じるはずである。
何か新しい事を始めて極めようと思ったときに、自分自身の力として1番に身に付く方法はこれに限るはずだ。
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